団地の中の2階建て「メゾネット住戸」

団地再生物語 | 2015.8.18

「団地」と聞いてみなさんが想像するのは、おそらくエレベーターがなくて、階段を上がると左右に1戸づつ玄関ドアが現れるような、5階建てくらいの団地ではないかと思います。正式には中層階段室型住棟といわれているものです。昭和30~40年代に多く建てられました。

典型的な中層「階段室型」住棟
武里団地(埼玉県)

その後、昭和40~50年代になると日本各地で「ニュータウン」が誕生し、高層片廊下型住棟が現れ、量的に普及されていきます。当然エレベーター付きで、「階段室型」ではなく「片廊下型」となることで、各フロアを自由に行き来できるようになり、現代のマンションに近いかたちとなっていきます。

一般的な高層「片廊下型」住棟

その道中、質的なバリエーションの展開を図った実験的な住戸として誕生したのが、高層住棟内に2階建て住戸を取り入れた「メゾネット住戸」です。
しかし「メゾネット住戸」が数多く普及することはありませんでした。つまり絶対数の少ない希少な存在となったのです。

ここでは、もう一度メゾネット住戸を見直してみたいと思います。

現代のマンションに近い片廊下型の団地では、通常、共用廊下から他人に部屋を覗かれてしまう心配があるので、風を取り入れたいときに玄関ドアや廊下に面した部屋の窓を大きく開け放つには、少し抵抗があります。
「メゾネット住戸」の場合は、2フロアの内、玄関は1フロアだけなので、全ての階に共用廊下が必要ありません。そのため、共用廊下となる玄関のあるフロアではなく、廊下のないフロアをリビングにすれば団地の特長である南北に風が通り抜けるという間取りにしやすくなります。
つまり「メゾネット住戸」は、1フロアだけの住戸よりも風や太陽の光などの自然エネルギーを有効に利用できる、という特長をもっているのです。

その他にも、「メゾネット住戸」には、大きな特徴があります。上階と下階に住んでいるのは同じ家族なので、上階の音で迷惑することはありません。騒音が他の人の生活に響くことは少なくなりそうです。
以前のコラム「団地で解決したいこと」でも紹介したこの考え方は、実はもうすでに存在していたのです。

この「メゾネット住戸」の良さを活かすリノベーションプランを考えてみたいと思います。
例えば、「メゾネット住戸」の2フロアが重なるという特徴を活かすために、上下階を一体的につなぐスケルトン階段を設置し、横方向だけではなく縦方向にも繋がる一体空間をつくるのはどうでしょうか。

上下階の一体化した空間を提案している、無印良品の家「木の家」のスケルトン階段。

無印良品の家「木の家」でも、上下階を吹き抜けのあるスケルトン階段で一体空間としています。階段をスケルトンにすることで風や光が通り抜けるだけでなく、視線が通りやすくなり、限られた面積でも空間の大きさをより感じることができ、開放感を得られます。
また、空間がつながっていることで、家のどこにいても家族の気配が感じられるような暮らしをすることができます。もちろん団地では、ふすまを閉めることで家族の適度な距離感をととのえることもできます。そして、前述した「メゾネット住戸」の特徴を活かし、窓を大きく開けて自然を感じることができ、音を気にすることなく子どもを上階で遊ばせることができます。

そんな暮らし方が団地でできたらいかがでしょうか。
「メゾネット住戸」のリノベーションについて、みなさんのご意見をお聞かせください。