他人の家をのぞき見(8) 新築が建ったときに、転勤を命じられたら…

初心者が家を買う | 2011.3.24

FUJI 男性。30歳代後半。夫婦ふたりで、子供なし。
僕が「実際に家を購入するまで」の顛末記を連載することになりました。
この企画を始めることになったときには独身だったので、ひとりでアレやコレや考えたりしていたのですが、結婚したら、妻の意見、というものもありまして、以前にもまして混乱ぎみかも…。

みなさん、こんにちは。FUJIです。
まずは地震により被害にあわれた皆様に、心よりお悔みとお見舞いを申し上げます。

私(FUJI)個人としては、今後も、震災にみまわれた皆様のために何ができるかを考えていきたいと思います。また今後の復旧復興は、震災にみまわれた土地だけの問題でなく、自分自身に関係のあることだ、と感じています。家族とも相談し、家を購入するのはしばらく延期する、ということになりました。そのための労力を使う時間で、何かできることがあるだろう、と考えています。

というわけで、「私が家を購入するまでをレポートする」という趣旨のこの連載も、まことに勝手ながら、今回をもってひとまず休載となります。これまでこの連載を読んでいただいた皆様、ありがとうございます。最後まで中途半端で申し訳ありません。

その代わり、というわけではないのですが、同僚の無印良品の家スタッフが先日、家を購入したのです。そのスタッフが家を実際に買うまでの顛末をレポートした連載を、後日、始める予定となっています。

今後とも、無印良品の家 住まいのコラムをなにとぞよろしくお願いいたします。
m(_ _)m


みなさん、こんにちは。FUJIです。

前回お邪魔したKさんに、「それにしても、家を買ったのに転勤になると悲劇だね」ということを言ったら、Kさんが「それなら、俺の友人を紹介してあげるよ。たぶん、すごくFUJI好みの家なんだよね」とのこと。

それだけでなく、「実はその友人は、念願の注文住宅を建てたんだけど、家が建つ直前になって、転勤を命じられて…、という悲劇もあったんだよ」、と。

というわけで、紹介してもらったOさんのお宅にお邪魔してきました。

予算には限りがあるけど、考え方次第で土地が買える?


Oさんは、奥様とお子さんとの3人家族です。お子さんは小学校中学年になります。当時、お子さんが生まれたのをきっかけに、ご夫婦ふたりで住んでいた賃貸住宅が手狭になったこともあり、家探しを始めたのだそう。こちらからの問いかけに、ご夫婦が代わる代わる答えてくれました。

奥様いわく「それほど予算がなかったから、中古の安い集合住宅とか建売住宅をリフォームして、って最初は考えていたんです。でも…何年ものあいだ、物件をそれこそ何十件と見て回っても、気にいるものがなかったんですよ……」

やはり、中古物件はお気にめさなかった、ってことですか?

「そうではなくて…、別に新しさというか、そういうことには一切こだわってなかったんです。また、そんなに広い家が欲しいわけでもないし、ちょっとくらいダンナの勤務先から遠くてもいいよね、ってことで、予算内でほんとにたくさん見たんだけど、気にいる物件がなかったんです」
何が気に入らなかったんでしょう?

「やっぱり間取り、ですね。中古のマンションや一軒家をリフォームして、細切れになった部屋をひとつの広い部屋にしようとしても、構造上、できなかったりするんですよ。こうなったら、自分達で建てるしかないかな、と話していたんですが、予算がそれほどあるわけでもないし、やはり新築の注文住宅っていうのは厳しいかな、と思っていたんですよね」

で、この家を建てることになったのは?

「それが、運よく格安の土地を見つけたんです。この土地って、いろんな悪い条件があって、ほんとにびっくりするくらい安かったんですよ」

郊外でもクルマなしで大丈夫?


その「悪い条件」というのは、こんな感じなのだそうです。


(その1)旗竿地であり、建物の計画が難しい
(その2)旗竿地への道路が狭くて、クルマが入らない
(その3)旗竿地に接する道路も非常に狭く、大型の車両が入らない
(その4)家の裏手が急峻な崖で、建物を計画する場合、行政の指導を受ける必要がある


とくに、(その2)の条件は、都心部の土地ならともかく、Oさんのお宅があるあたり(いわゆる湘南エリア)では、かなり厳しい条件なのだそうです。

また、(その3)の条件によって、結果的に、狭小住宅に近いサイズの家しか建てられないということも、この土地の不人気さに繋がったのだとか。

「でも、私たちとしては、別に広い家が欲しかったわけでもないし…。でも、クルマのことはちょっと悩みましたね。子どもが生まれたばかりの頃は、『クルマがあって助かった』と感じることも多かったので。でも、夫婦で話して、思い切ってクルマを手放すことにしたんです」

郊外に住んで、クルマなしで不便じゃないんですか?

「それが…、実際にクルマを手放してから『あれ、別になくても困らないね(笑)』、ってよく話しているんですよ。自転車もよく利用してますし、まぁ、雨が降ったら歩くなり、どうしても必要なときはタクシーに乗るなりすればいいんだな、って。それにクルマの維持費ってバカにならないじゃないですか? それもなくなったので、今では『クルマなし生活のほうがいいな』って言ってます」

今どきの住宅に、「土間」がある!?


さて、そうして建てたOさんのお宅ですが、Oさんと奥様、それぞれのこだわりがやはりあるそうです。

「僕はもともと、昔ながらの日本家屋みたいな感じが好きだったんですよ。縁側があって、屋内と屋外が続いているような感じ、ですね。それで、リビングルームを吹き抜けにして、リビングルームから庭に臨む窓もリビングルームと同じ幅の、非常に大きなサイズにしたんです。縁側のかわりに、リビングルームと段差のないポーチをつくってあります。過ごしやすい季節には、この窓を開け放って、リビングルームがさらに広くなったような感じで使うと気持ちいいんですよ。冬はさすがに窓を開け放したりはしませんけど、吹き抜けとそれに面した大きな窓のおかげで、明るいだけでなく、冬でもあたたかく過ごせるんです」

確かに…、今日は暖房もつけてませんものね。それでもほんとうに暖かいです。


そういえば…、ポーチだけでなくて、この家って、土間がありますよね。玄関から入ったところに。

「それは妻のこだわりなんですよ。もともと、妻が木工作などが趣味で、木で模型をつくったり、古い家具をリフォームしたりしたい、と。それで土間があると便利かな、っていう話になって」

土間があると、お子さんが泥だらけになったりしたときにも便利じゃないですか?

「そうなんですよね。それだけじゃなくて、『土間だから、ちょっとくらい乱雑になっててもいいかな』という感じで、外で使うものなんかをちょっと置いておくのにも重宝してますよ」

住宅ローンがあるのに転勤。どう乗り切る?


そういえば、この家がちょうど建ったときに、転勤になった、と聞いたんですが?

「そうなんです…。ほんとうにショックでしたね。あとひと月で竣工する、っていうときに、会社から転勤を命じられて…。僕が勤める会社は、地方支社があるんですけど、本社採用の人間は、あまり転勤がないんですよ。それですっかり安心していたのがいけなかったですね。それで、住宅ローンの返済もあるので、泣く泣く、借り手を捜すハメに…」

でも、この土地って、いろいろ制限があるから、人気がなくて、それで価格も安かったわけで…。それなのに、借り手って見つかるものなんですか? さらに、転勤が終って本社に戻るのを見越して、期間限定で貸し出したわけですよね?

「この土地が人気がなかったのは、この土地のデメリットをデメリットとしてだけ見ていたからだ、と思うんですよ。たとえば、家を貸し出すときにお願いした不動産会社の方は、『建坪○○m²(狭いです…)、旗竿地、駐車場なし、崖下』と、単純な土地の状況だけを条件として挙げるわけです。それではもちろん、住みたい人は見つかりませんよね」

ふむふむ…。

「それで、家が狭いのを逆手にとって、『家は狭いですが、野菜を育てられる広い庭があります』とか、『駐車場はありませんが、自転車を止めておける土間があります』というふうにアピールしたんです。こちらでそういう文面を考えて、不動産会社にメールで送って。さらに、家の写真もアピールポイントをこちらで撮影して、掲載してもらいました。そしたら、あっという間に、8組も申し込みをもらったんです」

なるほど…。不動産会社の情報だけでは、やはりわからないことってたくさんあるわけですね。

「FUJIさんも、家探しをしていらっしゃるんですよね。能書きばかりでなく、やはり実際の物件を見て回ることが大切だと思いますよ(笑)」

はい、反省しています…。