本がたくさんの家にしたい/岡尾美代子(スタイリスト)

寄稿・インタビュー | 2005.10.1

本がたくさんの家にしたい。

雑貨や空間のスタイリングをするときには、どういう壁でどういう床でどういう光なのかということ、そしてそこにどういう服を着る人が住んでいるか、ということを考えます。

「木の家」を見たとき、これは木に囲まれた場所にあるといいな、と思いました。窓が大きく前面に開いているので、それが全部緑というイメージ。そしてそこを、私だったら、自分だけの図書館、隠れ家のような場所として住みたいと思います。一階の長い空間にずらりと本を並べたい。
昔から本や雑誌がとても好きなんですが、引っ越しの時に捨ててしまったものもたくさんあって、いまとても後悔しているんです。いまは本棚におさまりきらずに積み上げてあるんですが、たくさんの本が置ける場所があったら、いいだろうなあと思っています。

「木の家」は大きな一室空間で開放部が大きいので、ステージのような感じ。だからこそ、カーテンのない空間で本を見せたい。でも自分がもし住むとしたら、カーテンをつけて閉めっぱなしかもしれない(笑)。なぜかというと、家に中に隠れる場をつくりたくなるかもしれないから。
そういう工夫でおもしろいのは、たとえば部屋の中にテントを建ててみたり、シュラフで寝てみたりすること。「house in house」。そうすることで、「木の家」の空間の広さを満喫できるような気がします。

いま「木の家」も一室空間ではなく間仕切りのある部屋のついたものも出ているようですが、そうした少しモノから隠れる場、というのもときには必要になるんですね。

私はとくにモノを集める仕事をしているので、時々モノからふと離れたくなるんです。無駄なものをなくして、自分だけの場所に身をおいて、自分を確認する時間がときどき欲しくなります。
私が旅を好きなのは、モノを見たり集めたりすることが好きなだけではなくて、厳しいところに身をおいておきたくなるという理由もあるんです。自分ひとりだけになる場所に身を置くと、自分が楽になる。私たちは実は、なにもないところでも住める。テントの中でも生活できるし、旅先ではトランクの中のものだけで生活できる。モノがたくさんなくてもいいのではないか、と思います。

でも、海外に出ると、モノを買わずにはいられない(笑)。はちみつは必ず。「一旅一はちみつ」と決めて買っています、重いから(笑)。最近は「くまのはちみつ」と決めているんですが、世界中にあるんですね、くまのはちみつって。封を開けないまま、とってあります。

旅行に行くときにはかならずリモアの大きなスーツケースを持っていきます。もう、ほんとうにボコボコ。でもこのスーツケースはボコボコにして使うものですよね。最初に傷がついたときには「うっ!」と思う。でもそれがなじむと味になる。床と一緒かな。家も同じですね。

岡尾美代子
スタイリスト。洋服から雑貨まで、幅広いスタイリングを手がける。
著書に「Fedor」アスコム、「Room talk」筑摩書房、「Land land land」ギャップ出版、「Zakka book-72の雑貨の話」マガジンハウスなどがある。

2005年10月発行 無印良品の家カタログより