収納の知恵

住まいのかたち | 2008.8.12

どうしたらきれいな収納を実現できるのでしょうか。
整理整頓された収納は誰しもが望んでいる姿です。
現代では蔵があるような昔の家とは違い、限られたスペースに収めていかざるを得ません。そしてはみ出した物は、捨てるしかないのです。
逆説的ですが、収納とはいかに物を捨てるかということかもしれません。それは物の優先順位を決めながら、自分にとって必要な物とは何かを考えていくことです。ある意味、所有欲との戦いです。

一見もったいないようにも思える「捨てる」という行為は、物に優先順位をつけていくことで、自分にとっての物の価値を発見する作業といえるでしょう。そしてそのことは、物を永く使うための大切なプロセスとも言えるかもしれません。
生活するのに、どれだけの物が必要なのかは住む人によってずいぶんと差があるでしょう。本を読むのが好きな人、音楽が好きな人、また趣味の道具が多い人、友人が泊まりにくる人。
スペースに限りはありますが、何も持たずに住むようなことはできないのですから、自分にとって適量な収納スペースを考えなければなりません。

さて、現代の住宅の間取りを考えてみると、あらかじめ用意されている収納がそもそも少ないようにも思えます。それは部屋数を確保したいという要望から、本来納戸のような部屋も寝室として使わざるを得なくなっているからでしょうか。

しかし住み始めれば、それはすぐに破綻してしまいます。限られた面積の中で、有効に収納スペースを確保するには、設計段階から建築に組み込む必要があります。マンションなどではオプション対応で、スペースだけでも確保すると快適でしょう。
スペースを始めから用意しない場合は、部屋の中に収納となる置き家具の場所を確保しなければいけません。それは広い空間であれば、美しいレイアウトの知恵も出せますが、ぎりぎりの狭い空間では、なかなかうまくいかないものです。

下の図は2階建ての間取りで、あらかじめ十分な収納を確保したものです。
わかりやすいように、少しオーバーに大きな収納スペースを確保してみましたが、いかがでしょうか。
収納スペースを確保するために、リビングをなくして、そのぶんダイニングを充実させました。スペースさえあれば、あとから少しづつ棚を追加していくこともできます。

私たち「住まいのかたちを考える」プロジェクトチームでは、今年9月から半年間をかけて収納のあり方を考えていきたいと思っています。

その答えは人それぞれでしょう。しかし自分の収納方法や収納量について考えるときのヒントになるような、取り組みにしたいと思っています。今後も取材やアンケートなどをしていきながら皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
自分にとって必要な物はなにか。その問いは、物を大事にするための、永く使うための第一歩と言えそうです。

2008年8月12日配信 無印良品の家メールニュース Vol.97より