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日本人の住まい
著: エドワード・S・モース
story | 2014.11.13

明治時代、日本の農村の暮らしを撮影した写真を、現代の子どもたちが見ると、
アジアの見知らぬ国の貧しい地域と勘違いするかもしれません。
20世紀の日本の発展は目覚ましく、それは、欧米の豊かさを知り、貧しさを克服して、豊かな暮らしを追い求めた100年でした。それは奇跡的な発展だったと言えるでしょう。
その結果、高度成長期の「豊かさ」の現物支給を経て、私たちの生活は確かに欧米並みに豊かになりましたが、果たして20世紀人が目指したゴールにはたどり着いたのでしょうか。

私たちは今も、アメリカの邸宅や北欧の暮らしぶり、ドイツの住宅性能などに憧れを抱き、今の日本の暮らしと比較しながら、自分の理想のライフスタイルを模索し続けているように見えます。もしも、その理想を探す旅に迷った時、もう一度、スタートから考え直したいと思った時に、私たちが立ち戻る旅の出発点はどこにあるのでしょう。

1838年、日本では天保9年、アメリカの東海岸に生まれたエドワード・シルヴェスター・モースは、39歳の年に動物学者として標本採集のために日本を訪れます。彼はその年に東海道線の車窓から大森貝塚を発見、翌年、東京大学法理文学部教授に就任しました。

日本で暮らし始めた彼は、初めて見る東洋の島国の庶民の生活や、暮らしの道具、家屋にも興味を持ち、講義や研究の合間に東京近郊を巡るようになります。その風景にも慣れ、興味も薄れてしまうと、モースは動物学の観察で鍛えられたスケッチの描写技術で、庶民の暮らしぶりを徹底的に、大量に記録し続けました。モースは左右いずれの手でも、絵を描くことができたのです。彼は日本滞在中、アメリカとは違う時間を生きてきた日本人を白眼視することなく、先入見のない眼差しで観察を続けました。

生活と住まいを克明に描いたスケッチは、帰国後の1886年、ニューヨークのハーパー社から出版された「Japanese homes and their surroundings」に収められます。私たちはその日本語版「日本人のすまい(日本のすまい)」で、脱亜入欧思想前夜の、日本のライフスタイルや、日本の家屋に秘められた生活の知恵、当時の人々の暮らしの工夫を知ることができます。既に失われた風景もあれば、21世紀の日本に未だ息づいている住宅の意匠や様式があることに驚くはずです。

モースが残してくれたたくさんのスケッチは、私たちが理想のライフスタイルを探す旅路に迷った時に、出発点にも道標にもなる貴重な資料だと思います。私たちのライフスタイルはどこから来たのか。私たちは、日本を愛した動物学者の目を頼りに、20世紀の100年を一足飛びに遡ることができるのです。博物学的な記述に怯まず、図版を楽しむことから読み始めたい一冊です。

『日本人の住まい』|エドワード・S・モース / 2004年 / 八坂書房

単行本:  409ページ
出版社:  八坂書房; 新装版 (2004/04)
ISBN-10: 4896948416
ISBN-13: 978-4896948417
発売日:  2004/04
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