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団地再生物語
「新築そっくり」にしない団地リノベーション
column | 2014.10.7

MUJI×URが提案する「新しい団地」が広がり始めています
2012年から大阪の団地で始まったMUJI×UR団地リノベーションプロジェクトは、2013年度に東京の高島平団地でもスタートし、今年はさらに品川八潮パークタウン国立富士見台団地、そして名古屋の千代が丘団地アーバニア千代田と、地域も戸数もどんどん広がり始めています。

もともと、「日本の新しい暮らしのスタンダードをつくる」という意気込みでスタートしたこのプロジェクトは、多くの方にこの「新しいかたち」が受け入れられ浸透して、はじめて本当の意味で「スタンダード」になると言えます。
そういった意味で、プロジェクトが広がりを見せている、ということは、名実ともに暮らしの新しいスタンダードになる可能性を示唆しているようです。

このように、多くの方に受け入れられている「新しいかたち」、MUJI×URのリノベーションの特長はいくつかあります。間仕切りをなるべく取り去り、賃貸でありながら、住み手が自分の暮らしにあわせて間取りを編集する余地を残していること。その編集のための家具や、MUJI×UR共同開発商品の提案。そしてその家具などを、住まい始めてから設置しやすくするための「仕掛け」が用意されていることが、一番大きいところかもしれません。

しかし、もう一つ重要な要素として、年数の経った団地のフルリノベーションでありながら、「新築そっくり」につくり直そう、あるいはそっくりに見せようとしていないところではないか、と私たちは考えています。

「家」の価値持続の本質とは
日本の中古不動産市場での、「家屋は25年経つと評価価格がゼロになる」という査定基準はおかしいのではないか、と言われ始めてから随分経ちます。欧米では築50年の家でもきちんと手入れされていて、立地の良い家は、むしろ新築時よりも高く評価されることが珍しくないようです。
たしかに、家は立地とは切っても切れない関係にあるので、そのような家は他に代えられない価値があるはずです。ただ古いというだけで家屋の価値をゼロとしてしまう日本の不動産査定基準は、ガラパゴス化していると言えそうです。
日本の査定問題についての云々は別の機会に譲るとして、欧米での家屋の高評価の重要な要素の一つである、「きちんとした手入れ」について考えてみましょう。

どのような「手入れ」が「きちん」としているかというと、これはやはり「永く使える」ためのメンテナンス、ということになるでしょう。水まわりや空調などの設備が機能するようにしておくことはもちろんで、日本でもそのようなメンテナンスは行われています。

しかし、欧米の映画やドラマでは、家の塗装を住み手が自分で塗り替えている姿をよく見かけます。外壁の場合は劣化を防ぎつつ風合いを保ち、内壁の場合は好みの色や柄にしていたりします。永く住み続けるための手入れなのでしょう。住み手が何度も塗り替えた壁面は、けして平滑ではなく、新築時と同じにはなりませんが、むしろ、何度も塗り変えた独特の風合いとあいまって、住人の家への愛情(=大事に使われていた証)が感じられるのではないでしょうか。

何度もモップやワックスをかけて「手塩にかけた」床も、たとえ傷だらけでも、傷ひとつない新品の床材よりもむしろ好感度が高かったりします。
年数が経った家の価値持続の本質は、傷一つない新品部材に無理やり入れ替えられていることより、長年満足感をもって住まわれてきた実績の証として「きちんと」した手入れが施されていることであり、またそのような「手の入れ方」により、今後も同様の満足感を持続できることを感じさせてくれることなのかもしれません。

団地の歴史をそのままに、住まいを持続させるリノベーション
2012年にこのプロジェクトを始めるにあたり、「団地について」のアンケートを実施したところ、約半数の51%の人が「現在、団地に住んでいる」または「過去に団地に住んでいたことがある」と答えており、「住んだことはないが、訪問したり公園などで遊んだことがある」という方を含めると9割以上の方が、団地について親近感を持っていることがわかりました。

私たちはこのアンケートから、「団地はもはや日本人の原風景になっている」と感じ、そのように多くの人に親しまれてきた団地を「新築そっくり」につくり変えよう、という発想をやめたのです。

新築当時に使われていたドアや、タイル、和室の一部など、場合によっては使われなくなった設備であっても、それらを再塗装するなどしながら極力残し、なるべく真新しいものを足さないという方針を決めました。
残したものには傷もあれば、出っ張っているものもあります。しかし長年日本人の暮らしを支えてきた団地の価値をさらに持続させることは、傷一つない新築そっくりに戻すことでも、見栄えのする素材に入れ替えることでもないのではないでしょうか。
それよりも団地そのものが持つ、明るさ、風通しの良さ、そして新しい価値として、賃貸住宅であっても住み手が自分で間取りや雰囲気を編集できる余地を与えることで、団地はさらに私たちの暮らしを支え続けてくれるに違いない、と判断したのです。

古い建物の記憶を残しながらも、新たな時代の暮らし方にあわせていく。壊して新しい建物をつくるのでなく、直して住み続ける。しかも自分の理想の間取りにリノベーションできる。
そういった思い切った方針による「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」が多くの方の賛同を得て広がりを見せていることは、本当に嬉しい限りです。
今後もプロジェクトは継続していきます。このプロジェクトに関する皆さんのご意見・ご要望をぜひお聞かせください。

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