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団地再生物語
香港の団地とリノベーション事情
column | 2015.2.10

今回は海を渡り、香港での暮らし・リノベーション事情をご紹介したいと思います。そもそも「香港における住まいとは、どんなもの?」というまったく未知なところから見ていきましょう。
香港では、戦後の中華人民共和国の成立や文化大革命により、大量の移民を抱え込むようになったという歴史的背景があります。領域が狭く(東京都の約半分の面積)、人口密度が高い(世界第四位)香港では、集合住宅が一般的で、中心市街地では20階を超える高層の集合住宅が数多く立ち並び、現在では全人口720万人の約99%が集合住宅に居住している! という事実があります。
つまり香港において、「住む」=「集合住宅」なわけです。

しかし、厳しい現実もあります。最近のニュースでは、不動産開発業者がせっせと宣伝しているのは、若い中間所得者層向けの高級物件で、広さが16m²しかないのに価格は150万香港ドル(約2000万円!)もする新築ワンルームがあったり、面積約28m²の1室の価格は、なんと500万香港ドル(約6700万円!)。このあたり完全に不動産バブルといえましょう。

空港から九龍に向かう間にたくさんの最新高層マンションが建てられている

では、お金のない低所得者は香港に住んでいないのか?というと、そうではありません。現在の格差社会ではお金持ちはごく一部で、ほとんどは中間層以下の低所得者で人口が構成されており、彼らは比較的家賃の低い、または購入価格が安い「築30年以上の中古住宅」に住んでいるのです。古い物件となるとリノベーションは必然的であり、香港においては「住む」=「集合住宅」=「リノベーション物件」なわけです。

香港にも日本のような「公営住宅」はありますが、本格的な大量建設が始まったのは、先にも述べた中国からの大量の移民を抱え込むようになった1978年以降からで、それ以前から建設されてきた民間の集合住宅が多く、築30年以上の民間高層住宅が香港全体の50%を超えるといわれています。

じつは、香港にも日本の「UR都市機構」と同じような機関があります。それが、「香港都市再生局」(Urban Renewal Authority~つまり略すとUR!?~)です。
ちなみに、日本の「UR」は「Urban Renaissance Agency」の略なので、微妙に違いますが、再生、復建という意味では同じです。
香港都市再生局は1999年に設立され、都市再生が急務とされる中心市街地に対して迅速に対応するべく、以下の4つ(4R)が主な活動です。

1:再開発(Redevelopment)
2:民間集合住宅の改修(Rehabilitation)
3:歴史的建築物の保存(Reservation)
4:既存施設を活かした地域再活性化(Revitalization)

日本のURとの一番の違いは、2:民間集合住宅の改修で、経済力のない低所得者が住む、民間の集合住宅の改修の手助けをしているところです。
香港ゆえに低所得でも集合住宅に住まうしかない→まともな修繕積み立てができていない→建物の老朽化が著しい→都市の景観が損なわれている、ということです。
我々がよく香港でイメージするジャッキー・チェンの映画に出てきそうな都心の景観は、このような仕組みが根底にあり、香港におけるリノベーションは、早急に取り組むべき社会問題となっているのです。

都心部でよく見かける風景。簡単な塗装などの修繕は行われている

大規模修繕中の高層マンション。竹の足場で完全に覆われています

では、もっと古い築50年程の公営住宅はどうなったかというと、そのほとんどは、いまは取り壊されて残っていません。しかし、その一部は歴史的な価値から保存され、リノベーションされて再利用されているものもあります。その代表的な事例が、美荷楼(Mei Ho House)です。

香港に公営住宅が建設されるきっかけになったのは、1953年のクリスマスに発生した大火災で大勢の人が家を失ったことが始まりだそうですが、その初期に建てられた一つが美荷楼(Mei Ho House)です。老朽化したため団地としては閉鎖し、2013年10月にユースホステルとして生まれ変わりオープンしました。また、香港政府から歴史的建造物に指定されており、建物の一部が当時の生活を再現した博物館となっています。

博物館の見学は無料で、50年代、60年代、70年代と時代ごとに香港の人たちの暮らしを見ることができます。当時は低層で片廊下型が2棟並んで建っていて、日本の公団団地とよく似ています。当時の写真を見ると遊具で遊ぶ子供たちなど、まさに団地の原風景です。

建設当時の風景。日本の団地原風景に似ている

時の住まいの様子を一部再現。二段ベッドと麻雀が香港らしい

建設当時の再現模型

リノベーションで生まれ変わった「美荷楼(Mei Ho House)」上層階はユースホテルに

いま、香港ではこのような低層の団地はほとんど残っておらず、わずかに保存されているだけです。一方、日本にはこのような低層団地はまだまだ日本中にたくさんあります。
香港は土地も狭いので、縦に高くするしかありませんでしたが、日本では都心部や駅前でない限りは、わざわざ高層にする必要もありませんし、古くなっても丁寧に修繕を繰り替えしながら使い続けようという精神が日本人らしいのではないでしょうか。

無印良品ではMUJI×UR団地リノベーションプロジェクトを通じて、風通しの良さ、環境の良さ、広い住棟の間隔、コミュニティーの良さなど、あらためて団地の良さを見直してきました。
日本の団地の要素がいかに贅沢なことであるかは、都心部に就職で上京して狭い一人暮らしのアパートに住んでいた経験のある人はわかると思います。あと30分、時間をかけて都会にいても、自然を感じれる場所に住むことを検討してみてはいかがでしょうか?

新宿から30分。国立富士見台団地には、立派な樹木と広い公園が備わっている

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