あかりについて・後編

寄稿・インタビュー | 2008.11.28

住まいを彩る「あかり」について、パナソニック電工株式会社インテリア照明事業部のライティングコーディネーター墨 貞宏氏、東京Archi LABデザイン担当の田中晴美氏のお二人にお話を伺いました。
引き続き「あかりについて」の後編をお届けします。

照明計画をしてみる
実際に家を建てる時にどのようにあかりの計画をするのかを伺いました。一般的に、家を建てる時に照明計画は最後になってしまうものです。しかし、あかりを考えることは、どのような暮らしをしたいのかを考えることです。計画の始めから考えておくことが大切だと言えます。

わかりやすくリビングダイニングを例にとって考えてみましょう。
下の図をご覧ください。あかりの計画をするときには、まず「中心のあかり」と「背景のあかり」について計画します。中心のあかりとは、部屋全体を照らすあかりのことをいいます。つまり必要なあかりという意味です。しかしそれだけでは居心地のいいあかりの演出ができません。ここで重要なのが背景のあかりだそうです。

実際にこの場所に暮らしているシーンを想像してください。まず人が入り口から部屋に入ってきます。ドアを開けたらリビングの方を見ます。リビングはすでに中心のあかりがあり明るくなっていますが、その先の角が暗いと不安を感じますので、そこを明るくします。

次にソファに座ってテレビを見ます。テレビのある壁が暗いと画面との差がありすぎて目が疲れますので、壁を明るくします。空間の反対側も少し明るくすることで、広々と暗闇のない安心した空間になるようです。また、逆に点けても意味の少ない明かりもあるようですので注意して下さい。
この様に、暮らしのシーンに応じてあかりが必要な場所を検討し、位置を決めていくことが大事だと言います。

マンションの照明計画
戸建て住宅の新築の計画ではかなり自由になる照明計画も、マンションの場合制約は多くなります。スイッチの回路までは中々変えられないものです。そこでせめて照明器具を変えられるように、将来の選択肢を残すという意味で配線ダクトを使うケースが増えているようです。

マンションによって状況は違うので一概にはいえませんが、意外と照明の変更の為の選択肢は少ないとのこと。さらに墨氏は「気をつけなければいけないのが、天井に出ている梁の近くの照明です。小さくしぼらないと、梁の側面があかるくなり床に影ができてしまい、かえって暗さが目立つようになり逆効果です。」とつけ加えていました。

電気工事を後に行うには通常、天井を張り替えないとできません。上記写真の商品は厚さ1ミリの電気配線です。Panasonicのシーリングトラックという商品で、クロスの下に入れることで、改修時に、天井を壊さずに配線することができます。まだあまり普及していないようですが、こうした商品も使いながら、電気器具の位置をかえることもできます。

あかりを切り替える
「気持ちのいいあかりとは、自然界にある光の変化に合わせること。朝は夜明けのように、そして夜は日が沈むように、徐々に暗くなって、身体も眠るようなあかりにしていくことが大切です。」と墨氏は、いいます。
パソコンや携帯電話のような光は脳を覚醒させて、眠りの前には身体には良くないようです。また、あかりというのは、そのときの気分によって感じ方が違うものです。子供ができたり成長したりと、ライフステージによってもあかりは変わってくるでしょう。食事のときのあかり、団らんのあかり、くつろぎのあかり、寝る前のあかりなどシーンによっても変わるようです。

大事なことは、それぞれのシーンによって、あかりの切り替えが出来ること。あかりを切り替える為に、照明の回路を分けて計画をし、調光できればより多様なシーンに対応できます。先に述べた背景のあかりなどの調査によると計画段階よりも実際は照度をおとして皆さん過ごしているようです。調光は省エネにもなりますし器具の寿命も延ばすとのことです。

回路を多くすると、スイッチが目立ってしまいがちです。
しかし、このコントローラーを使えば、小さなスイッチであらかじめ記憶してある部屋のあかりが点き、その時々の気分で変えることができます。このコントローラーはキッチンなど人目につかないところに設置すると部屋がすっきりします。

あかりから暮らしを考える
「お風呂の電気を消してアロマキャンドルだけで湯船にはいるととてもリラックスできます。一度試してみてください、一日の疲れが本当に癒されます。」こんなお話を、この取材に立ち会っていただいた広報の岡本氏からいただきました。
暗闇の中で好きな香りと好きなあかりにつつまれてお湯の中で過ごす時間、話を聞いているだけでなんだか気持ちよくなります。

※キャンドルは火を灯して楽しむものですが場合によっては火災や火傷といった事故の原因にもなりますので、火のお取り扱いには十分にご注意ください。

あかりを考えるということは、どんなシーンで時間を過ごすのかを考えることです。つまり、あかりを考えることは暮らしを考えることにほかなりません。
みなさんは、どんなあかりの中で暮らしたいでしょうか。あかりを知ると、もっと暮らしが豊かで楽しくなります。最後に取材をした皆さまから、「あかりをもっと知ってほしい。陰影を楽しんでほしい。よいあかりを体験してほしい。」というメッセージをいただきました。