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寄稿
現代家族と住まい/染谷正弘(建築家)
column | 2008.4.1

現代家族と住まい

家族って何だろう? 時折、ふと、そう思う。
ひとつ屋根の下に暮らす夫婦とその子供達、その夕餉(ゆうげ)の「家族の団欒」が家族を象徴する風景だろう。サザエさんやちびまる子ちゃん家族の夕食シーンを思い浮かべればいいかもしれない。

でも、最近、結婚しないでバリバリ働く女性、離婚して晴々と暮らす友人、連れ合いに先立たれたけど元気なお婆ちゃん、そんな一人暮らしをする人は結構多い。
また、一方で、大家族をあまり見かけなくなった。小型犬や猫のペットを飼う人が多くなったのも、そのせいだろうと思ったりもする。実際、東京に暮らす家族の平均人数は、いまや約2.1人だという。東京の家族のほとんどが二人暮らしになったということだ。結婚しない若者が増え、何よりも子供家族と一緒に暮らしたがらない高齢者が増えていることが、その原因だろう。
ビートルズやローリングストーンズを聞いて青春時代を送った元気な高齢者(アクティブシニア)は、子供家族よりペットと暮らしたほうが気ままでいいと考えているらしい。

日本の人口は、2008年あたりにピークに達し、ついに減少し始めた。そして、家族の「高齢化」と「少人数化」はますます進行している。家族数が一人、二人になって、それでも家族といえるのだろうか。少なくとも、現代の家族像は大きく揺らいでいる。

とはいえ、夫婦とその子供たちからなる子育て世代家族は、いまも家族の主流ではある。ただ、その暮らし方も、やはり大きく変化している。
まず、家族全員で一緒にすごす時間が極端に少なくなってはいまいか。夫は会社で残業、妻はパートやカルチャースクール、子供は学習塾と、家族全員それぞれが何かと忙しくせわしないのが現代家族の日常だろう。
家族全員で食事をするのは、一週間のうち何回あるだろう。その生活シーンは、ひとつ屋根の下に暮らしていても、まるで一人暮らしをしているかのようだ。現代家族の誰もがシングルライフの暮らしをしている、そういってもいいかもしれない。

そんな暮らしをサポートしているのが、現代の住まいだろう。
蛇口をひねればすぐお湯は出るし、電気ポットも電子レンジもあるから、いつでも好きな時に一人で食事はでき、お風呂にも入れる。それに、近所のコンビニに行けば何でもある。
また、携帯電話やEメールがあるから、いつどこにいても家族同士のコミュニケーションは可能だ。
日常の連絡事項など、直接会話しなくても済んでしまう。「高齢化」や「少人数化」とともに、現代家族の「シングルライフ化」はどんどん進んでいる。

だから家族の絆が希薄になったかといえば、そうは思わない。むしろ、家族の絆は、ますますかけがえのないものになっている。その絆を醸成する舞台として、現代の住まいはどうあるべきだろう。
家族全員にそれぞれのライフスタイルがきちんとあって、それぞれが互いの気配をいつもさりげなく感じ合える、だから安心して現代社会で生きていける。
そんな生活拠点としての住まいを実現できないものだろうか。いつもそんなことを考えている。

染谷正弘

建築家。(株)デザインショップ・アーキテクツ代表、文化女子大学講師。
戸建住宅や集合住宅の設計を中心に、住まいづくり、街づくりにたずさわる。最近は、「コミュニティをデザイン
する」という発想のもと、大規模集合住宅のデザイン・プロデュースを数多く手がける。

2008年4月発行 無印良品の家カタログより

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