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寄稿
東北のエコハウスから学んだこと
column | 2011.1.18

未来の家プロジェクトで無印良品とコラボレーションする東北芸術工科大学は、今までのコラムでも紹介してきたように、二つの実験的な家を建て、性能や過ごしやすさを検証してきました。
一つは現段階で最高水準の性能を持つ「山形エコハウス」。これはいわばF1自動車のようなもので、海外も含めてハイスペックの設備やサッシを使用した先進モデルです。
もう一つの「蔵王エコハウス」は、コンセプトは同じながら部材や設備を削ぎ落とした廉価版。一部2×4(ツーバイフォー)の輸入材を使っていますが、設備やサッシはすべて国産、また太陽光発電の面積を小さくして施工費を抑えています。ここでは、2つのエコハウスで実践したことの一部を紹介します。

山形エコハウス

蔵王エコハウス

まず室内は大きなワンルームで空気がつながり、均質な温度の空気が柔らかく全体を循環しています。
吹抜があると上と下で温度分布がバラつきそうですが、高断熱の家では室内温度にムラが少なく、とても心地よいものでした。空調機の風が直接からだに当たるのが苦手な人、ヒートショックが心配な人などには最適だと思います。

高断熱高気密は間違いなく、これからの家の基本になります。
よく誤解されるのですが、これは単に魔法瓶のような密閉した家というわけではありません。日本ならではの自然や環境と上手に付き合う作法は、エコを考える上でより大切な概念になるでしょう。窓を開ければ風が通り、中間期には自然を十分に室内に取り込むべきです。
夏や冬、気候が厳しい季節には熱交換換気システムでフレッシュな空気を取り込みながら熱は逃がしません。素朴だけれど、家を快適にする技術はきっちり使った家です。

しかし山形で用いた断熱性能を関東で使うと、ちょっと過剰かもしれません。地域の気候に応じた適切なレベルを設定していくことになるでしょう。

次に窓。窓から取り入れる太陽光は家の温熱環境に大きな影響を与えます。冬は部屋の奥まで光が届き、また夏は適度に遮断。日光によってもたらされるエネルギーは大きいのです。山形エコハウスでは庇(ひさし)の長さを、冬にはたっぷり陽を採り込み、夏には遮るように調整してあります。

太陽光発電は必須なのでしょうか? 上記のような性能の家ならば空調による消費エネルギーはグッと抑えられます。給湯のためには太陽熱温水器がリーズナブルで有利かもしれません。実際エネルギー交換率は高いのです。
もちろん太陽光パネルが載っていたほうがいいのですが、安いものではないので、客観的な数値分析をして必要な機器の優先順位をつけようとするのも、このプロジェクトの特徴です。

家はITのように見えないテクノロジーが潜んでいるわけではなく、昔から蓄積された知恵と工夫の集積でできています。そういう意味ではとてもローテク。大切なのはどんな環境、家族に対し、どんな空間、技術を組み立てて行くか、その総合性だと思います。
そういう視点で、これからあるべき「未来の家」について、この共同プロジェクトを通して、皆さんと一緒に考えて行きたいと思います。

馬場正尊

1968年佐賀県生まれ。1994年早稲田大学大学院建築学科修了。博報堂、早稲田大学博士課程、雑誌『A』編集長を経て、2002年Open A を設立し建築設計、都市計画、執筆などを行う。東北芸術工科大学准教授。
最近の作品に、「勝ちどきTHE NATURAL SHOE STOREオフィス&ストック」、「房総の馬場家と連棟」、著書に、『R the transformers〜都市をリサイクル〜』(R-book制作委員会)、『POST-OFFICE/ワークスペース改造計画』(TOTO出版)、『「新しい郊外」の家』(太田出版)など。
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