「無印良品の家」を支える柱

住まいのかたち | 2009.7.9

先日、「無印良品の家」を支える柱や梁を作っている工場へ取材に行ってきました。
場所は岡山県の真庭市。中国山地のほぼ中央に位置する山間の静かな町です。
私も家を構成する部材の中で最も重要な柱や梁がどのように作られているか、興味津々で見学させていただきました。

「無印良品の家」では柱や梁に集成材と呼ばれる木材を使用しています。
集成材とは木を短冊状に挽き、木の繊維の方向に沿って並行に重ね、強力な接着剤で接着させたものです。

集成材には一般的に以下のような利点があります。

・乾燥収縮が少なく、狂いが生じにくい。
・無垢の木で生じるような、材質のばらつきがない。
・強度性能を表示できる。
・断面や長さが自由に作れる。

などなど・・・

無印良品の家ではSE構法という構造を採用していますが、特に強度性能がはっきりしている集成材を使うことで構造計算を可能にし、開放的でありながら耐震性・耐久性のある建物を実現しています。
無印良品の家の「永く使える、変えられる」というコンセプトは、まさにこの集成材を使用しているからと言えるのです。

さて、集成材ができる過程を順を追って見ていきましょう。ここでは梁の製造過程を見学させていただきました。

まず、短冊状に挽かれた材料(これをラミナと言います)が運び込まれます。
これをモルダーという機械で4面削り、寸法を整えます。
ものすごい速さで次から次へと材料が流れていきます。処理能力は毎分300mというから驚きです。

そのあと、このラミナに荷重を掛け、たわみの量をから強度を判定して選別をします。

これは、材料を機械で読み取り、大きな節や割れなどの外観上の欠点がないかどうか測定するものです。
形はまるで病院にあるMRIみたいですね。

人間の目ではこれだけの速さで材料の欠点をチェックするのは到底無理ですが、この機械は一本一本正確に判定し、接続されたディスプレイ上にその結果を表示していました。すごい!

これらの機械で選別されたラミナは、強度別に分けられて次の工程へ進みます。
なぜ、強度別に分けられるかというと、集成材はバランスよく強度を発揮するように外側の材ほど強度の強いラミナを使うようになっているのです。ですから、このここまでのラミナの正確な強度判定とその仕分けが重要になります。

強度別に仕分けられたラミナは、リフトで二階に上げられます。
そして、いよいよ接着の工程に入ります。ローラーが一枚一枚丁寧に接着剤を塗布していきます。

強度別に重ねられた材料はこのあと大型のプレッサーで圧着されます。

そして、いよいよ集成梁の完成です。
これはできたてほやほやの集成梁。まだ接着剤がはみ出ているのがわかりますか??
このあと、4面を精度よく削って寸法を整えたあと、目視チェックによる検品を行っています。

機械で自動化されている部分もすごいですが、やっぱり最後は人間の目視で丁寧に仕上げる。
物づくりに対する真摯な姿勢に私も非常に感動しました。

そして、さらにこの工場のすごいところはこの製造過程で発生する端材や木屑を利用してバイオマス発電を行っていることです。なんと、工場内で使用する電力を100%まかなっているだけではなく、電力会社にも売電しているというからさらに驚きです。
また、材料を削った時にできるプレーナー屑は良質な木質ペレット燃料に加工され、全く無駄がありません。あるものはすべて余すところなく生かすという「もったいない」精神が隅々まで生きています。

これがペレットです。家庭用のストーブやボイラー用に使われます。

やっぱり百聞は一見にしかずですね。現場を直接見て話を聞くととても勉強になります。
無印良品の家を支えている柱や梁がこのような素晴らしい工場で作られていることに安心したのはもちろんのこと、ものづくりの現場を間近で見ることで、私たちも更に良い家づくりを目指し努力して行かねば!という気持ちになりました。