団地を丸ごと1棟借りられたら

団地再生物語 | 2015.4.21

以前のコラム「団地をまるごとシェアハウスにして住む」では、団地の1室だけではなく、1棟まるごとで住まいを考えることで、団地がこれまでにない用途を持って、魅力的に生まれ変わる可能性について考えてみました。
今回も、「もしも団地を丸ごと1棟借りられたらどう使うか」を皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
あくまで「もしも」の発想であり、ハード(構造などの物理的なもの)と、ソフト(法規制やルールなど)の成約などはいったん横に置いておいて考えを進めていきましょう。

もしも、1階がすべてオフィスだったら
団地の1階は、構造的に特別なフロアです。階下に人が居ないので、足音の響きやすいコンクリート床そのままでも問題なく、またコンクリート床にすると仕上げの厚みがなくなる分、天井高も通常のフロアより高くできるという特徴があるからです。また、1階ですから、外部とのアクセスが最も取りやすいフロアでもあります。
この特別なフロアを通常の住居ではなく、すべてオフィスにしてしまうというのはどうでしょう。

オフィスですから、靴のまま動きやすいように床はコンクリートのまま、天井が高くなるので仕事場として向いています。1階ですから、多くの来客があってもエレベーターがないことが問題になりません。
そして、2階から上をすべてそのオフィスに勤務する方々のための住宅、社員寮として使えば、究極の職住近接オフィスの出来上がりです。1階全てのオフィスが1社で大きすぎるのであれば、何社かでシェアしても良いですし、住居スペースは社用の物置などにも利用ができます。
1階のオフィスに隣接する屋外スペースは、人が集いやすいようにウッドデッキやパーゴラを設置しておけば、仕事時にはランチや休憩の場として、休日には仲間同士のバーベキュースペースとしても賑わう、とても素敵な仕事場となりそうです。

もしも、5階がギャラリーだったら
エレベーターのない団地では、5階は最もアクセスしにくいフロアです。見晴らしの良さと引きかえに、毎朝毎夕、階段5層分を昇り降りしなくてはならないため、住戸としてはなかなか微妙な選択肢かもしれません。
そこで、最上階の5階を毎日出入りする必要のない用途での活用方法として、誰でも使えるオープンスペースにしてしまうのはどうでしょうか。
先ほどの1階をすべてオフィスにする提案とは逆に、団地を丸ごと1棟借りられるのであれば、1~4階をクリエイター系の方々が住みたくなるようなアトリエ付きの住戸にリノベーションして、最上階を彼らの作品の発表の場としてのギャラリースタジオとして提供するというわけです。

常にいろいろな展示がされているアーティスティックな場として、外観も少し目立つデザインにすれば、団地内の人気スポットとなりそうです。
ただのオープンスペースではなく、大きなキッチンを広いスペースに一つ設置しておけば、キッチンスタジオとして、料理の得意な方が教室を開いたり、パーティルームとしての利用もできます。一部を部屋として残しておけば、共通のゲストハウスとしても使えそうです。最上階の5階のギャラリースタジオは、階下に住む人たちで、運営していくのです。

このように団地を1戸の住戸としてだけ考えるのではなく、1棟まるごと街に開いていく発想、皆さんはどのように考えますか。ぜひご意見をお聞かせください。