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住まいのかたちコラム
再考・家と家の間を考える―塀は必要?
column | 2009.8.4

まちづくりについて考え始めました
無印良品は「暮らし」についていつも考えています。そして、生活雑貨や家具ばかりでなく、いつの頃からか家についても考えるようになりました。家は、暮らしの器だからです。

家について、住まいのかたちについて考え、そして誕生したのが「木の家」、「窓の家」、「朝の家」です。
さらにいま、私たちはまちづくりについて考え始めました。家は一軒だけがポツンと建つわけはなく、たくさんのさまざまな建物が建ち並ぶまちのなかに建つからです。私たちが考えた家が建ち並んで住宅街ができるとしたら、その街はどうあったらいいのだろう。まちなみは、庭は、どうあるべきなのだろう。

そう考え始めた時、一軒の家をデザインすることはまちをデザインすること、まちをデザインすることは「家と家の間をデザインする」ことだということに気づきました。同時に、戸建住宅で暮らす一番の喜びは、草木や土の香り、四季の移ろいを日々肌で感じることのできる庭を楽しむこと、大地に接して暮らすことを最大限に享受すること、そうあらためて認識しました。

再び、塀について
「向こう三軒両隣」。まちはそこから始まります。
家と家の間には道があり、庭があります。そして、隣の家との境界を介して庭と庭は接し合いつながっています。
境界線をきちんと残しながら、お隣さん同士で庭を一部でもいいから共有できないものだろうか、そうすればより広い庭を享受できるのはないか。
せめて、お互いの庭を借景にし合えたらそれは素敵なことに違いない。「家と家の間をデザインする」という発想はそこから生まれています。その時、塀はどうあったらいいのでしょう。

どんなに立派な塀があったとしても、完全に泥棒から守ってくれるものではありません。
防犯対策というより、塀は「ここからは進入禁止」という記号としての役割が大きいのです。本来、塀とそれに付随する門は、武家屋敷の象徴であり、四周を道路で囲まれた広大なお屋敷とセットであるべきものなのです。

東京の高級住宅街「田園調布」に、敷地の四周に高い塀は造らない、低い生垣にするというまちづくりルールがあったことはご存じでしょうか。埼玉県大宮市にある「盆栽町」にも同じようなまちづくりルールがありました。東京の「成城」もそうでした。

いずれも大正時代にまちづくりが始まった日本の郊外住宅街の先駆けとなったまちです。
いまや高級住宅街として有名ですが、それも、街や家を緑化し、かつ家をまちに対してきちんと開くというコンセプトに基づくまちづくりルールがあったからのように思います。

レッチワース(田園都市)

大宮市盆栽町

成城の住宅街

田園都市と郊外住宅街
田園調布は、ロンドン近郊にある世界で最初の田園都市「レッチワース」をお手本にして開発されたまちとしてよく知られています。
田園都市とは、「都市と農村が結婚して生まれたまち」と定義されています。
つまり、田園の豊かな自然と都市の利便性の両方を兼ねそなえた立地環境、「郊外」ということです。

いま私たちが普通に暮らしている戸建住宅は、田園都市の概念とともに、郊外とセットになって初めて登場しています。
それが近代住宅(モダンリビング)で、およそ100年前のことです。
戸建住宅は、本来、郊外という立地環境にあるべき住まいのかたちと考えていいでしょう。それは、お屋敷では決してありません。日本のお屋敷の原型は武家屋敷ですが、そのルーツは田園の大きな農家(イギリスではマナーハウス)にあります。また、都市の住まいのかたちの基本は、いわゆる町屋、長屋であり、タウンハウス形式の集合住宅です。

田園のお屋敷(農家)と都市の町屋(長屋)が結婚して生まれたのが、郊外の戸建住宅と言ってもいいかもしれません。
そして、自然豊かで都心に通勤可能な郊外に戸建住宅だけが集合して建ち並ぶ街、それが郊外住宅街ということになります。
しかし、最近の郊外住宅街では、駐車場を確保したら庭らしい庭を実現することは難しく、地価の高騰で郊外であっても宅地そのものが狭くなってしまったのが現実です。
そうした背景もあり、お隣さん同士で庭をその一部でもいいから共有できれば、庭らしい庭を享受できる住まいが実現できるかもしれない、そのためには「家と家の間をデザインする」という発想はより有効だと私たちは考えました。

集まって住まうことの意義
さらに「家と家の間をデザインする」という発想は、建て売りの住宅街において最も活かされるものではないかと考えています。
建て売りの住宅街は、あらかじめ家々を配棟計画して建設し、竣工後に分譲されますから、家と家の間をよりデザインしやすいのです。
集合住宅を設計するように配棟計画が可能な戸建住宅のまちを、私たちは戸建集合住宅と呼ぶことにします。

きちんと家と家の間がデザインされて庭が共有されれば、向こう三軒両隣の家々の庭は表庭も裏庭もなくなり、まるで公園の中に家々が建っているかのような素敵なまちなみになるに違いない、そんな住宅街を私たちはイメージしています。
実は、それが、20世紀初頭に構想された田園都市のコンセプトでもありました。
そのためには、良好な近隣関係が不可欠となるでしょう。

むしろ、庭を共有し合うことが、良好な近隣関係を醸成し、地域コミュニティを活性化する契機になればいいと考えます。そもそもお隣さん同士でいがみあっていたら、居心地のよいまちになりようがありません。
その結果として、安全で住みやすく、緑豊かなまちなみは形成され、まちの資産価値と共に家の資産価値も高まるはずです。郊外の戸建住宅街に、集まって住まう、共に暮らすことの意義と喜びは、そこにあるのではないでしょうか。

2009年8月4日配信 無印良品の家メールニュース Vol.146より

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