住人祭レポート「赤羽」

住まいのかたち | 2010.4.24

無印良品とリビタによるリノベーションプロジェクト第1号物件「リノア赤羽」。
ここにお住まいの方が主催された住人祭へお邪魔してきました。

開催期間
2010年4月24日(土)
場所
リノア赤羽

リノア赤羽とは

リノア赤羽はリビタが1棟丸ごとリノベーションを行って分譲した中古マンションです。無印良品では、その一室である204号室の設計企画をリビタと共に行いました。
1棟丸ごとリノベーションの魅力の一つは、分譲マンション同様に新たに入居者を募るので、通常の中古マンションを購入するのとは異なり、住人同士のコミュニティ自体も新たに形成されることです。
さらに「リノベーション」という住まい方に興味を持っている人が集まっていますから、価値観の近しいコミュニティができやすくもあります。
リノア赤羽ではこれまでも、みんなでオニギリをつくるワークショップや敷地内の森を散策しながら植物について学ぶワークショップが行われてきました。他にも無印良品+ReBITAリノベーションプロジェクトの住戸(以下、リノア赤羽204号室)では、落語家を呼び、住人を集めて寄席も開かれました。
リノア赤羽204号室は、住まい手がいかようにでも使える空間とすることを狙ってはいたのですが、まさか寄席が行われるとは想像もしていませんでした。期待以上の住まい方をされており、我々としても感激してしまいます。

春の住人祭「全国物産市」開催

テーマは、「地方物産」。
生まれ故郷の名産品を持ち寄ってのお取り寄せパーティーです。
リノア住人の皆さんをあっといわせる、珍味、甘味、銘酒を各自でご持参いただきました。

今回お邪魔した住人祭は「全国物産市」です。
住人はもちろん、リノア赤羽の改修に携わったリビタ、共用部を設計したブルースタジオのメンバーも参加し、各自が自分の故郷の名産品を持ち寄り、共用スペースの中庭で会食をする、という内容です。
この中庭には東屋の様な建物があり、普段から自然と住人が集まり交流を促すマグネットゾーンにもなっています。敷地内の森と隣地がお寺であることで、都心とは思えない緑豊かで閑静な環境です。
今回の物産市には65名が参加しました。関東、関西、東海、東北など地域別のテーブルを用意し、それぞれのエリアの名産品が並べられます。自慢の名産品だけあってどれもおいしく、自然と故郷自慢の話に花が咲き、笑顔と笑いの絶えないとても盛り上がった住人祭となりました。

参加者は皆で心から楽しんでいましたが、初めからこんなに住人祭が上手くいっていたのかと思い、住人の方に聞いてみました。
その方は、「初めて参加したのはオニギリのワークショップだったが、どんなものか全く想像ができなかったので正直軽く覗いてみる程度」という気持ちで参加をしたそうです。しかし参加してみると自然と住人同士の会話が生まれ、「積極的に話しかけて仲良くならなきゃ!」という気負いはなくなり、次回も参加したいという気持ちが強くなったそうです。

しかも気づいたら今回の住人祭の発起人にもなっていた、とのことでした。やらされ感や努力、義務といった感覚が少しでもあると良い住人祭にはなりませんし、継続していく事もできないでしょう。「楽しいから」というシンプルな動機こそ最大のモチベーションになることは住人祭だけではなく、あらゆる活動でも同じだと思います。

住まいの価値というのは単体の住戸だけではなく、近隣とのコミュニティも重要な要素です。残念ながら日本の多くのマンションではコミュニティ形成のきっかけとなる仕掛けがされていません。でも本当は皆、つながりを持ちたいと考えているのではないでしょうか。大切なのはきっかけを作り出すことだと思います。リノア赤羽の様に東屋という建築的なきっかけを生み出す仕掛けを設ける事以外にも方法は色々とありそうです。真っ先に手を挙げるのは勇気がいりますが、賛同してくれる人は思っている以上に多いかもしれません。

リノア赤羽のある住人の方は、こうもおっしゃっていました。「リノア赤羽に暮らし始めて、マンションの価値は自分たちでつくるものだと考えるようになった。今ではこのコミュニティにはまってしまった。もう他に引っ越す事は考えられない。リノア赤羽が好きだから住人との交流も、建物も中庭も大切にしていくつもりです」。こんな言葉が出てくるコミュニティは決して多くはないと思います。住まいに大切なのは新築かリノベーションかではなく、いかに愛着を持てる住まいにするか、ということです。どの様にしてそんな住まいにするか。住人祭はひとつの答えかもしれません。

ちなみにリノア赤羽では、夏至前夜に外灯を消灯して、ロウソクを灯す「キャンドルナイト」が先日も開催されました。更にお隣のお寺の座敷を借りて、「納涼寄席」も画策中とのことです。益々盛り上がるコミュニティ。益々楽しくなるコミュニティ。こんなマンションに暮らしてみたいと思いませんか?