みんなで考える住まいのかたち

  • もっと家の話をしよう
  • 入居者インタビュー
  • 住まいのコラム
  • アンケート
  • ちんぷんリノベ村
  • 小さい住まい
「縦の家」が目指したもの
高い断熱性能が暮らしにもたらすもの
column | 2014.5.20

前回のコラムで、「縦の家」は日当たりや風通しの厳しい都市部に建つ家だからこそ、断熱性能をトップクラスに上げるためにできることは全てやりました、とご紹介しました。

さて、この高い断熱性能が暮らしに何をもたらすのでしょうか。
「え?エアコンの効きがよくなって、少ない電気代で冬暖かく、夏涼しくなるということでしょう?」と思われるかもしれません。確かにその通りです。しかし、それだけでは「縦の家」における断熱性能の恩恵を正確には言い表せていません。どういうことか、お話していきたいと思います。

私たち日本人は、もともと「暖房=部屋を暖める」という概念がなく、「採暖=暖を取る(火鉢、こたつなどで体の一部をあたためる)」という方法で冬の寒さをしのいできました(コラム「日本の家はずっと無暖房住宅でした」)。
さらに、「もったいない」という美徳を持っているため、エアコンが普及した今でも、人がいない部屋を暖房することに少し罪悪感があるのではないでしょうか。
家族が集まるリビングだけを暖房し、寝室や、まして廊下やトイレは寒いままにしておく、つまり「家」を暖房するのではなく、「部屋」を暖房するのが一般的となっているのが現状です(このような暖房の方法を「個別間欠暖房」といいます)。

しかし、「リビングだけを暖房する」というのは実はエネルギー効率が悪いのです。
例えば外気が5℃、暖房していない他の部屋が15℃とすると、暖房で22℃に暖めたリビングは、部屋の4方向を「自分の空気より冷たい空気」に囲まれることになり、しかも室内の壁やドアは全く断熱されていないので、どんどん熱は奪われていき、リビングそのものでさえ「完全に暖かい状態=冷たい空気がどこにもない状態」にならない、つまりいつまでも足元が寒かったりするわけです。

性能の低い断熱性能と、個別間欠暖房により、日本の家はいまだに、1つの部屋さえ十分に暖房できていない、「採暖」の域を出ていない、と言えるのではないでしょうか。
その証拠に、日本の家庭向けエアコンは、どんどん「採暖」能力を高めています。「人」を感知し、人のいる方へ風向きを調整したり、さらに、人の足先が冷たいことを感知すると足元をピンポイントで暖める、という技術進化を遂げていますが、これは「部屋を暖める」のではなく、「人を暖める」という「採暖」の発想そのものです。
「採暖」は一概に悪いこととは言えません。考えようによっては、「火鉢」は究極のエコと言えるかもしれません。
しかし、昔の家のように断熱性能が低く、家中が寒いのであればまだしも、部屋全体を暖めない暖房(個別間欠暖房)をして、家の中に温度差をつくることは、ヒートショックや結露の原因となり、実は良いことではないのです。

縦の家」は間仕切りのない「一室空間」なので、個別の部屋だけ暖房(冷房)するという発想のない家です。
エアコンは階段室回りの1階と3階の2ヶ所に設置されており、冷暖房が必要な季節は24時間運転が基本です。なぜなら家中どこでも同じ室温を保ち、空気だけでなく、壁や柱、梁や土間コンクリートなども全て均一に温め蓄熱をさせ「ずっと冷やさない」方が、「暖める→冷える→また暖める」を繰り返すより暖房エネルギーが小さくて済むからです。

この「縦の家」のような冷暖房方法を、「個別間欠冷暖房」に対して「全館冷暖房」と言います。
「もったいない」を美徳とする私たち日本人には贅沢と思われがちなのですが、高い断熱性能、自然エネルギーの活用、それを活かす家のかたち、の3つの条件がそろえば、使うエネルギーはむしろ小さくなり、自分が気持ちいいと思える温度をずっと保つ「快適な家」となるのです。

間仕切りなく家中を均一の温度に保つことができる断熱性能のおかげで、「縦の家」は快適であるだけではなく、北側に大きな窓を設けられるようになりました。
前述のように、個別間欠暖房の家では「北側の部屋は寒い」というのが一般的です。ここに大きな窓を設けたら結露が発生し、さらにほとんど外の気温と変わらないくらい寒い部屋になってしまうので、北側の窓は小さくしておく、というのが日本の家づくりのこれまでの常識です。
しかし「縦の家」では、北の部屋も南の部屋もない、温度がバリアフリーの一室空間なので、窓だって大きくつけたいところにつけて良いのです。

隣家が密集する都市部の住宅地では、北側が道路の場合、南側からの日当たりが期待できず、南側に窓を設けても太陽熱どころか、明るさも十分に採れません。
しかし、北側の道路には建物がないので、大きな窓を開ければ、採光は十分に採れるのです。これまで一般的ではなかった北側の大きな窓を、「縦の家」では採光のために躊躇なく設けることができるのです。

トップクラスの断熱性能と、家全体を暖めるという発想が、実は「都市部でも明るい家」の実現にもつながっているのです。

「縦の家」は、冬の寒い夜、帰宅してから、あわててリビングに行ってエアコンのスイッチを入れる、ということがありません(そもそもリビングにエアコンがないのです)。
玄関を開けた瞬間に家が「お帰りなさい」というように暖かく迎えてくれ、たとえ日当たりの良くない都市部の土地であっても、日中はどの部屋も明るい家を目指したのが「縦の家」なのです。

皆さんはこの様な「縦の家」をどのように感じられるでしょうか。ぜひご意見をお聞かせください。

みなさんのご意見・ご感想を
お聞かせください。