みんなで考える住まいのかたち

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プロローグ

理想の家

人間にとって家は重要なんだろうな、と思ってきた。大工である犯人が憎む相手の家を微妙に歪ませることで復讐を果たす、というミステリーを読んだことがある。その家に住む限り、狙われた本人だけでなく家族や子孫まで不幸になってしまうのだ。おそろしい。でも、その逆はどうなんだろう。住むだけで幸福になれる家って、どういうものなのか。歪んだ家=不幸はわかるけど、真っ直ぐな家=幸福とはいかないだろう。不幸に比べて幸福には決まったパターンというものがない。寺山修司はたまたま見に行った家に作りつけの大きな書棚があったという理由でそこに住んだという。その迷いのなさ、一途さに憧れる。サーフィンが好きだから海の近くとか、陶芸が好きだから土の良い場所とか、うどんが好きだから香川県とか。そんな風に住処を決めた人の話を聞くと羨ましく思う。でも、真似できそうもない。自分が一番好きなものがわからないから、私は人生の全てに迷い続けてしまう。住むだけで自分にとって本当に大切なものを教えてくれる家、なんてないかなあ。

穂村 弘|ほむらひろし
歌人。1962年、北海道生まれ。
1990年に歌集『シンジケート』でデビュー。
短歌のみならず、評論、エッセイ、絵本翻訳など広い分野で活躍。
2008年に『短歌の友人』で第19回伊藤整文学賞、『楽しい一日』で第44回短歌研究賞を受賞。著書に、歌論『短歌ください』、エッセイ『もうおうちへかえりましょう』『現実入門』『もしもし、運命の人ですか。』『絶叫委員会』『君がいない夜のごはん』『蚊がいる』など。

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