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わがまますぎる?! まさに十人十色のリノベーション

休憩を挟んでのイベント後半。石井さんが手がけた事例の紹介が始まりました。

八王子市多摩地区で中古マンションを購入した、クリエイターのご夫婦。お勤め先は都心ですが、子育てのために実家に近い高尾山にほど近い西八王子へ。

かなり広めのお家ですが、内部はたくさんの個室に仕切られています。あとで改装することも想定されていなかったようで、天井には大きな梁がたくさん走っていました。

この事例の特徴は、ご夫婦の間で理想の住まいのイメージがまったく違ったこと。
奥さまの希望は、キッチンのまわりに皆が集まり、そのまわりに波紋が広がるように暮らしの空間が広がっていくイメージ。
一方、旦那さまの希望は膨大な蔵書を整理すること。石井さんの、たくさんある梁下をすべて本棚にするプランが気に入りました。「どちらがいい?」という問いかけに対して返ってきたのは、「どっちも!」という欲張りな答え。

そんな無理難題に答えたのが、2つのイメージをえいやっ、と重ねてしまったこちらのプラン。中心に馬蹄形のキッチンを置いて、間仕切りを本棚に。ハーフダイニングやインナーテラスを配しています。「無理やり重ねてみたら、意外とうまくいっちゃったんです」と石井さん。

さらに、お二人の好きな建築家・荒川修作をお手本に、体で知覚する空間づくりを。子供が登ったり入り込めたりできる、ハシゴでもあるような本棚。またゾーンごとにテーマカラーを変えたところもユニークです。

「ファミレスで仕事するのが大好き」な旦那さまのために、お家の中に「ファミレス(的空間)をつくってしまった」ところも、まさにリノベーションならではの自由さ!

2つ目は、お客さんの要望NO.1だという「広い空間で過ごしたい」がコンセプト。
規制の住宅ではリビング何畳・寝室何畳と決まっていることが多いもの。また狭い住宅が多い都心では、「どう工夫して広く暮らすか」頭を悩ませる人も多いでしょう。
このお客さまの要望は「ワンルームにしたいけれど、寝室とリビングを分けたい」という、これまたどっちなの?というわがまま。
でもそんな「わがまま」が叶ってしまうのが、リノベーションの面白いところ。

石井さんのプランはガラス張りの寝室。押し入れも鏡張りにして、玄関側から眺めると30帖ほどの広々した空間が広がります。一瞬「丸見え!?」とびっくりしますが、人間は視覚だけでなく嗅覚や聴覚など五感すべてで空間を知覚しているため、音と匂いが遮られるだけでも、思った以上に空間同士がほどよく区切られるのだそうです。

3つ目のコンセプトは「和のくらし」。
「子育ては規則正しい生活のリズムが大事」と考えていた三人家族。せっかく家をつくるなら、「家づくり」と「暮らしのリズムづくり」を一緒にやろう、というプロジェクトです。
かつて日本人の多くが住んでいた長屋。布団を出せば寝室に、片付けてちゃぶ台を出せばダイニングに、おかみさんがお裁縫の内職を始めればワークスペースに早変わり。一手間を入れることによって暮らしのモードが切り替わっていく、とても合理的な空間でした。
このプランはその長屋暮らしをお手本に、「畳の上で全ての生活が成立する」のがコンセプト。家族みんなで起きて一緒に布団を片付ける、一緒にちゃぶ台を出してごはんにする。それが暮らしのリズムになっていく。その結果、3人家族・50平米でもゆとりある空間に。バーカウンターまであります。
かつての暮らしとまだフィクションでしかない未来の暮らしを合体させたり、違う国など別の文化圏の暮らしを取り入れる。そんな複合的な家づくりが楽しめるのも、リノベーションの醍醐味のようです。

対する4つ目は「洋のくらし」。
リノベーションが当たり前の選択肢として受け入れられている欧米。家が広いせいか、百年前の建物を間取りはそのまま、インテリアや内装をおしゃれに変えて住む傾向があるそうです。
住み手はクリエイターのご夫婦。

間取りはオーソドックスなまま、インテリアにとことんこだわりました。設計の途中段階で、ご夫婦自らロンドンへ「買い出し」へ。お二人が選んできた水栓や照明器具を見ながら、それに合わせてまた設計を進める、という方法で進めていきました。
最近では国内でもアンティークのドアや建具など、プロしか入手できなかったような部材が気軽に買えるお店が増えてきました。部材選びや施工に住み手が参加するような、DIY(Do it yourself)を取り入れたリノベーションも人気が高まっています。

どれもまったく個性が異なる4つの事例。石井さんが「デザインを進めていくプロセスは、お客さんによってまったく違います」と言うとおり、理想のライフスタイルや個性に合わせて「家づくりの方法」や「ペース」や「進め方」まで自由につくられているのが印象的でした。